文房具好きの間で不動の人気を誇る、パイロットの木軸シャープペン「S20(エストゥエンティ)」。
しかし、購入を検討している人が必ずと言っていいほど直面する不安があります。
それは、「S20はすぐに先端が折れるらしい」という噂です。
結論から言うと、S20は確かに一般的なシャープペンよりも先端が繊細で、落とすと高確率で曲がります。
しかし、その弱点を補って余りある「極上の書き味」と「育てる楽しさ」があるのも事実です。
この記事では、S20を3年以上愛用している筆者が、
ガイドパイプを絶対に折らないための具体的な対策と、
使い込むほどに増す木軸の経年変化(エイジング)の魅力を徹底レビューします。
なぜ「S20は折れやすい」と言われるのか?原因を解説
S20が「折れやすい」と言われる理由は、軸(木の部分)が折れるのではなく、
「ペン先の金属パーツ」が曲がってしまうことを指します。
まずは、なぜS20がこれほどまでに衝撃に弱いのか、その構造的な理由を知っておきましょう。
| 項目 | S20(製図用) | 一般的なシャープペン |
|---|---|---|
| ペン先形状 | 細長いパイプ(4mm) | 円錐形(コーン型) |
| メリット | 手元がよく見え、定規を当てやすい | 衝撃に強く、筆圧が高くても安心 |
| 落下時のリスク | 一撃で曲がる・再起不能 | 多少の落下なら耐える |
最大の弱点「4mmガイドパイプ」の構造的特徴
S20はもともと「製図用」として設計されています。
そのため、ペン先には定規を当てても線が引きやすいよう、
長さ4mmの極細ステンレスパイプ(ガイドパイプ)が採用されています。
このパイプは視認性が抜群に良い反面、非常に薄く作られています。
そのため、床に落とした衝撃がこの細い1点に集中しやすく、
いとも簡単に「くの字」に曲がってしまうのです。
よくある破損パターン(落下・ペンケース内での圧迫)
S20の悲劇は、以下のようなシーンで頻発します。
- 机からフローリングの床に落下させた(ほぼ即死パターン)
- 胸ポケットに入れていて、前かがみになった拍子に落下
- 布製のペンケースに放り込んでいたら、カバンの中で圧迫されて曲がった
特に注意したいのは、
「ペン先収納機能」がないという点です。
常に繊細なパイプが剥き出しの状態であるため、持ち運びには細心の注意が必要です。
S20を折らないための「鉄壁の守り方」と運用ルール
「そんなに弱いなら買うのをやめようかな…」と思った方もいるかもしれません。
しかし、適切な管理さえすれば、S20は長く使い続けられます。
私が実践している「S20を守るための鉄則」を紹介します。
| 対策レベル | 方法・アイテム | 効果 |
|---|---|---|
| レベル1(必須) | キャップをつける | ペン先を物理的にガード |
| レベル2(推奨) | トレイ型・ハードケース | 圧迫や接触を防ぐ |
| レベル3(習慣) | 使用中は机の奥に置く | 落下リスクを最小化 |
シンデレラフィットする「キャップ」で先端を保護する
S20には純正のキャップが付属していません。
しかし、文房具ファンの間では有名な「シンデレラフィットする他社製キャップ」が存在します。
最も有名なのが、三菱鉛筆の「ユニボール シグノ」のキャップです。
または100円ショップなどで売っている「鉛筆キャップ」でも代用可能な場合があります。
これをつけるだけで、万が一落下させてもパイプが直接床に激突するのを防げます。
移動中は必ず装着しましょう。
ペンケースは「トレイ型」か「一本差し」を選ぶべき
ガチャガチャと音が出るような「缶ペンケース」や、中身がごちゃ混ぜになる「ポーチ型」はS20の敵です。
他のペンとぶつかり合って木軸が傷ついたり、ペン先が何かに引っかかって曲がるリスクがあります。
おすすめは、コクヨの「C2」のようなトレイ型か、
一本一本仕切りのある「ロールペンケース」です。
S20を特別扱いしてあげることで、破損率はグッと下がります。
【レビュー】使い込むほど美しい!木軸ならではの経年変化
S20の真骨頂は、購入してから始まります。
ボディに使われている「樹脂含浸カバ材」は、使い込むことで手の脂が馴染み、
世界に一本だけのペンへと育っていきます。
| 期間 | 見た目の変化 | 手触りの変化 |
|---|---|---|
| 新品(購入時) | マットでサラサラした質感 | 少し滑りやすい |
| 3ヶ月〜半年 | うっすらと艶が出始める | 指に吸い付くようなグリップ感 |
| 1年以上 | 深い光沢と色の濃淡が出る | 自分の手の形に馴染む感覚 |
新品と1年使用後の「艶」と「色」の違い
新品のS20は、表面がマットで少し白っぽい印象を受けるかもしれません。
しかし、毎日使っていると次第に表面が磨かれ、
濡れたような艶(ツヤ)が出てきます。
特に「ディープレッド」や「ダークブラウン」などの濃い色は、
より深みのある色合いへと変化し、ヴィンテージ家具のような風格が漂います。
この変化を楽しみたくて、何年も使い続けるファンが多いのです。
手触りの変化(吸いつくようなグリップ感へ)
見た目以上に変わるのが「手触り」です。
最初はサラサラしていますが、エイジングが進むと「しっとり」とした感触に変わります。
手汗をかいても滑りにくく、まるで指先とペンが一体化したような感覚。
「S20以外では文字が書けない」という人が続出する理由は、
この唯一無二のフィット感にあります。
基本スペックと「S30」「レグノ」との違い
最後に、S20の基本スペックと、よく比較されるパイロットの木軸兄弟モデルとの違いを整理します。
「S30(オートマチック)」や「レグノ」と迷っている人は参考にしてください。
| 機種名 | S20 | S30 | レグノ |
|---|---|---|---|
| 価格(税込) | 2,200円 | 3,300円 | 2,750円 |
| 機能 | 製図用(手動ノック) | オートマチック(自動芯出) | 一般筆記用 |
| ペン先 | 4mmガイドパイプ | 先端収納可能 | コーン型(折れにくい) |
| おすすめ | 書き味重視の人 | ノックが面倒な人 | 太軸が好きな人 |
低重心設計による書き味の安定感
S20は約18gという適度な重さがあり、重心がペン先側にある「低重心設計」です。
そのため、力を入れなくてもペンの重みだけでスラスラと筆記できます。
長時間勉強しても疲れにくく、細かい文字も書きやすい。
まさに受験生やハードユーザーに最適なバランスと言えます。
上位モデルS30や兄弟機レグノとの比較
後継機の「S30」は、ノック不要で書き続けられる「オートマチック機構」を搭載しています。
しかし、ガイドパイプと紙が擦れる感覚があるため、
「純粋な書き心地の良さ」ではS20の方が上という声も根強いです。
また、「レグノ」は軸が太めでペン先が収納できるため、持ち運びには便利ですが、
製図用のようなシャープな書き味を求めるならやはりS20に軍配が上がります。
まとめ:繊細だからこそ愛着が湧く。S20は育てるシャープペン
パイロットS20は、確かに「ガイドパイプが折れやすい」というリスクがあります。
しかし、それは「キャップをつける」「丁寧に扱う」といった対策で十分にカバー可能です。
その手間をかけてでも手に入れたい、
木軸特有の温もりと、最高の書き心地がS20にはあります。
ぜひあなたも、大切に使い込んで、世界に一本だけのS20に育て上げてみてください。
